癌の痛みには麻薬を使います。

麻薬というと怖いかも知れませんが、医療用の麻薬は丁度よく使えば依存性はなく、痛みのない丁度よい状態になります。

患者様にいつも説明する内容をお伝えします(* ॑꒳ ॑*)

まずは麻薬以外から

癌のいたみというと、麻薬とおもわれるかもしれませんが、

まずは風邪とか関節痛とかに使う

「カロナール」とか

「ロキソニン」とか

から使います。これで、痛みが治まるのであれば麻薬はまだ使いません。

また、骨転移といって癌が骨に転移した痛みは麻薬よりも、むしろ「ロキソニン」が効いたりもします。

また、麻薬の1段階てまえの合成麻薬というものがあります。

「ドラムセット」とか「ワントラム」「トラマール」と言ったものです。

つまり、癌の痛みが出たら

カロナール、ロキソニン

ドラムセット、ワントラム

麻薬

の順で効果を見ながら変更して行きます。

麻薬で大切なのは剤形(錠剤、座薬、貼り薬など)

実際に麻薬を使い始めたあとですが、

「オキシコンチン」とか「ナルサス」とか「フェントス」とか「イーフェン」とか「タペンタ」とか

とりあえずいろんな名前があり混乱しますが、

大切なのは剤形(飲み薬、貼り薬、座薬、点滴)です。

口から飲める場合

口から飲める人には飲み薬の麻薬から開始することが多いです。

「オキシコンチン」とか「オキシコドン」とか「ナルサス」「タペンタ」とか

どれを使うかは先生の好み次第なところもあります。

(腎機能や高血圧のくすりなど併用で使いにくいくすりもあります。)

換算表があり同じ効果を維持したまま他の薬に変更もできます。

それから後述の突発的な痛みに対してつかう

オキノーム、ナルラピドがあります。

口から飲めないとき

口から飲めない時は貼り薬や座薬、点滴があります。

貼り薬

貼り薬には「フェントステープ」と「デュロテップパッチ」というのがあります。

これも先生の好みですが

デュロテップが3日おきの張り替えに対して、

フェントステープは毎日取り替えになります。

医療者側からすると毎日張替えのほうが容量が細かく変更できるのでフェントステープが主流です。ただ、訪問診療だと金曜日に看護師さんが張り替えて、土日あけて、また月曜日に看護師さんが張り替えるなどデュロテップも重宝されます。

座薬

あとは座薬の「アンペック座薬」です。これは後述しますが、痛い時に追加で使うことが多いです。

点滴

そして、点滴や皮下注射です。「モルヒネ」とか「フェンタニル」「ナルベイン」とかです。

今は下記の様な小さなポンプがありますので皮下に持続注射したまま、生活することができます。

この箱に点滴も入ってます。

なんと1時間に0.5ccとかで入れられます。

皮下注射(ワクチンとおなじ)などので、間違って針がぬけても、血管に刺さってる訳では無いので出血はしません。

バッカル錠

新しく出てきた歯茎と頬の間に挟むものです。「イーフェンバッカル」とか「アブストラル」とかです。

速効性があり効きが早いのですが、使い方が特殊なのと容量調節が独特なのでまだ主流ではないです(´;ω;`)

次に大切なのが量の調節

剤形(飲み薬、座薬とか)が決まれば、種類に大差はありません。

大切なのは1番いい量を探す事です。

例えばガン末期の方が普通使っている麻薬量を正常な人がつかうと吐き気などで動けません。

今ある痛みに対して丁度いい量がみつかるといいです。

少なければ痛みが出ますし

多ければ「吐き気」「眠気」「便秘」などがでます。

どうやって丁度いい量を探すのか?

では、どうやって量を調節するのでしょうか?

それを知るためには「ベース」と「レスキュー」を知る必要があります。

ベース

ベースとは24時間投与する量です。

飲み薬なら8時、20時に定期的にのむ量(オキシコンチン5mg1回1錠8時、20時内服など)、

貼り薬なら1日に貼る量(フェントステープ1mg1日1枚胸に貼るなど)、

点滴だと1日に入れる量(塩酸モルヒネ10mg/日など)です。

理想はベースだけで1日1回も痛い思いをしないし、反対に吐き気、眠気、便秘など量が多すぎるための副作用がないことです。

レスキュー

レスキューはベースを飲んでても痛みが出てきた時に屯用で飲む麻薬です。

飲み薬では粉の「オキノーム」、液体の「オプソ」

座薬では「アンペック」

があります。

点滴の時はポンプについてるボタンを押すことで、ベースで使ってる薬剤からレスキュー分を投与してくれます。

レスキューの量としてはベースの量の8分の1から12分の1くらいの量が適当です。

1回使ったら次使うまでに1時間あける必要がありますが、1日に何回でも使っていいです。

レスキューは使わないにこしたことはなく、つかっても1日4回以下が目標です。

レスキューの使用量をみて、その分を翌日以降のベースに上乗せすることで、レスキューを使わない(痛みが1日ない状態)を目指します。

※また、痛みが夜間だけ悪化する人もいますので、例えば夜間だけ薬の量を増やすなどをすることもあります。お医者さんにどこが痛いのか、そして、いつ痛いのか(一日中いたいのか夜いたいのか)を伝える事はかなり大切なことです。

実際の調節はどんなかんじ?

患者さん例1

60歳男性、肺がんのIさん

胸の鈍痛に対して、

麻薬の飲み薬である「オキシコンチン」を

5mg1日2回8時、20時でのんでいました。

しばらくは平穏に過ごせましたが、

癌の進行とともに

午前中に2回、午後に2回、

寝ている時に2回、

突発的な痛みがあり、

医者に渡されたレスキューであるオキノーム5mgを1日6回飲んでいました。

※ここで注釈ですが、オキシコンチンの5mgとオキノームの5mgは全く別物です。オキノームの方が断然よわいです。

1日に6回も痛みでレスキューを使ってるのはつらいです。(すくなくともレスキューは1日4回以下目標)

なので「オキシコンチン」を

10mg1日2回8時、20時に変更しました。

これで、1日にレスキューを使うのは1回になりましたが、

便秘傾向になったため、下剤を追加で飲むようになりました。

患者さん例2

大腸癌で自宅で緩和ケア中の70歳女性Hさん

癌の痛みが出てきたため

麻薬を開始しました。

口からの麻薬摂取は困難なので

皮下注射点滴でのモルヒネ投与10mg/日を開始しました。

麻薬の副作用のためか寝ている時間は多くなったものの、痛みの訴えはなくなり穏やかにすごされました。

麻薬使用と死期

麻薬によって死期が早まることはないと言われています。

一方で日本では麻薬使用を躊躇することが多いのでギリギリの体力になってから麻薬をつかうことが多く

麻薬の使用が最後の時とおもわれることが多いように思います。

御相談ください

当院ではガン末期の方が多く、麻薬を使うことが多いです。

また、提携薬局と連携して24時間、必要なときに急遽麻薬を導入することも出来ます。

在宅緩和ケアの麻薬で不安な時はいつでも御相談ください。